おはようございます!よしき皮膚科・形成外科、院長の吉木です。
それでは本日の診療所日記をお届けいたします。
ケガをした直後にキズ〇ワーパッドを貼ってはいけない理由
転んで擦り傷をした、指を切ってしまった場合を考えてみましょう。
ケガをした直後は傷から出血が生じます。また擦り傷のような広い面積にケガを負った場合はしばらくその傷からは血液以外の浸出液があふれてきます。
傷を負った皮膚から出血や浸出液が出るということは実は「異物を物理的に排除しよう」とする原始的な免疫反応のひとつなのです(出血期)。
そして出血や浸出液が治まってきたあたりから物理的に洗い流せなかった細菌などの異物に対して、今度は免疫細胞がミクロレベルで排除する反応が生じます(炎症期)。
この出血期と炎症期では異物を洗い流し、細菌や異物などを排除して役目を終えた免疫細胞がまた異物となり、それをまた浸出液が洗い流し・・・といった感じで行ったり来たりしながら徐々に進行していくので特に傷がジュクジュクしやすい時期です。またこの浸出液は細菌にとっても栄養となりやすい様々な成分を含んでいます。
そんな時期に傷を塞いでしまったらどうなるでしょう?
浸出液を栄養にした細菌が増殖することで余計に免疫細胞による排除が長引くことになり炎症期がひたすら長引くことになるだけでなく、あふれる浸出液を吸い取れないため周囲に浸出液によるかぶれ(接触皮膚炎)を生じさらには特定の細菌が増殖してしまった場合トビヒ(伝染性膿痂疹)を生じたり、全身状態が悪く免疫状態も悪い方の場合、敗血症を引き起こす原因になる可能性もあります。
つまりケガの初期に傷パワーパッドのような絆創膏を貼ることは、逆に傷の治りを悪くする原因となるだけでなく貼ってしまうことによってそのほかの皮膚トラブルを生じる事になることの方が多いのです。
もちろん傷パワーパッドを1日に何度も交換すればいいのでは?とお考えの方もいるかもしれませんが、1枚300円以上するような高価な絆創膏を何枚も取り替えることが現実的な対応とはとても考えづらいです。
まずは水道水で良く洗い、ある程度浸出液を吸収し外部に逃がしてあげつつ適度にしっとりした状態にしておくことが傷、ケガの初期には重要です。
ですのでもし絆創膏を薬局で購入する場合では安くてもいいので傷に対してやや大きめの絆創膏を買って、浸出液で汚れたら頻回に交換することをお勧めします。
もし夜間などで薬局も開いてないという場合の応急の材料として使えるのが生理用ナプキンやおりものシートなどが使えます。
こういった素材は浸出液をよく吸収し、創部に引っ付きにくく、なにより滅菌して個包装されているためケガの初期における絆創膏としては実は完璧な素材だったりします。おそらくコンビニにも売っていますもんね。
傷パワーパッドはいつ使えばいいの?
傷パワーパッドがその性能を100%発揮する傷とは、出血もほとんどみられないごく浅い擦り傷や、深い傷でも出血期、炎症期が終わり、ある程度浸出出液が少なくなった次のフェーズである「細胞増殖期」に入った傷です。
実は傷パワーパッドが発売されるに至った背景として、30年ほど前くらいに褥瘡(床ずれ)など難治性の傷に対する研究が進み出血期、炎症期、細胞増殖期、成熟期といった創傷治癒過程と、それぞれの過程において何が傷を早く治し、何が傷の治りを遅くするのか?といった研究が急激に進んだという背景があります。
そのなかで「細胞増殖期においては湿潤環境が傷を治すためのベストな環境である」ということがわかり、様々な創傷被覆材が開発されていったなかでハイドロコロイドでできた創傷被覆材も出てきました。
そしてそこに目を付けたメーカー側が医療用だけではなく一般向けにもこのハイドロコロイド材でできた絆創膏を売るためのマーケティング戦略として「最新の知見では傷を治すのには湿潤環境がベスト」とうたい傷パワーパッドを一般向けに売り出したのではないかと考えられます。
もう一度言います。
「細胞増殖期においては」湿潤環境が傷を治すためのベストな状態です。
細胞増殖期以外の状態で傷パワーパッドを貼ってしまうことは傷を治すうえでマイナスになることがほとんどです。
単にケガといってもケガの状態がいまどのような状態にあるのか?その上でまずは適切な治療、処置、対応を考えて患者さんに提案・提供するのも我々の役目です。
あまりに多くの患者さんが間違った傷パワーパッドの使い方をされているのをこれまで目の当たりにしてきたので、注意喚起を込めて今回の診療所日記を書きました!
それでは今日も健やかな肌で素敵な1日を過ごしていきましょう!