【手荒れ、手湿疹】なぜ治らない?治りにくい?
おはようございます!よしき皮膚科・形成外科、院長の吉木です。
それでは本日の診療所日記をお届けいたします。
どこを受診しても同じお薬をもらう、けどなかなか治らない・・・
手荒れ、手湿疹で皮膚科を受診しても、どこでも、いつも同じようなお薬をもらうんだけど治らない!という経験をしていませんか?
薬を塗ればちょっと良くなる、けど夜中に痒くて無意識に掻いてしまったり、夕方頃にはまた元通りに・・・。
そして気が付けば何か月も治らない、そして冬は特にアカギレみたいになって痛くてツライ・・・。
本当に困りますよね。
私も趣味でプラモデルを作るので指先に接着剤が付いたり、塗料の溶剤が触れると激痛はするし、手を洗った後にアルコール消毒なんかするとまさに地獄の痛みが襲ってきます。
なかにはごく軽度の手荒れであれば数日ステロイド外用剤を塗ることで改善することもあります。
そもそもなぜ手荒れが生じるのか?そしてなぜなかなか治りが悪いのでしょうか?
手荒れが生じるわけと治りにくいわけ
理由はいたってシンプルです。
- 皮膚バリア機能の破壊
- 安静が保てない
この二つが手荒れを生じさせ、なかなか治らない大元の原因です。
よく「食器を洗っていて洗剤負けした」とおっしゃられる方がいらっしゃいますが、
洗剤そのものでかぶれたのではなく、特に家庭用洗剤は脂肪を強力に分解する成分が含まれているため、
洗剤が皮膚の脂(皮脂)を分解、除去してしまうことで皮膚のバリア機能を破壊することが一番の要因です。
そうなると皮膚表面に細かいヒビが入った状態になります。
その状態で手を使い続けるとどうなるでしょうか?
皮膚に生じた細かいヒビはどんどんと深いひび割れになり、ついには皮膚に深い傷が生じます。
傷が生じるとそこから様々な異物が侵入して炎症を生じるだけでなく、その状態でも皮膚は再生しようとします。
特に手や足など角層の厚い部位は皮膚表面の角層と呼ばれる硬い部分の皮膚の再生だけが目立ってくるため、
表面はガサガサ硬い皮膚でおおわれて来るのに、肝心の深い皮膚だけは治らないままという状態になってしまいます。
このようにして中途半端な皮膚の再生のまま常に外部から物理的な刺激を受け続けることで炎症を生じ、治っては悪くなるという典型的な難治性の手荒れが出来上がってしまいます。
手荒れの治し方
このように手荒れは単に乾燥している状態ではなく、炎症を伴った難治性の傷と捉えることが肝心です。
手荒れに対して保湿クリームだけ塗ってもなかなか治らない理由はここにあります。
さらに言えば一般的な傷薬だけ塗っても決して治りません。
傷を治すためには創傷治癒過程という傷が治っていくための過程を理解する必要があります。
傷が治る過程として
- 出血期
- 炎症期
- 細胞増殖期
- 成熟期
の4つの過程を経て治っていくことが知られています。
難治性の手荒れはここでいう炎症期と細胞増殖期を行ったり来たりして難治性になっていることが多く、特に炎症期がしっかりと収束して細胞増殖期に移行できないことが最大のポイントとなります。
特に手荒れにおける炎症期が長引く原因は細菌感染を伴った炎症ではなく、外部からの異物に対するものや、物理的刺激に伴って生じる炎症です。
なので炎症を止めるための第一選択としてステロイド外用剤を使用することになります。
その上で傷んだ皮膚のバリア機能を保護・改善させるために保湿剤を処方し、手を洗った後などに適宜使用していただくようにしています。
それでも治らない手荒れ
「そんなお薬もう使ってます!それでも治らないんです!」という声が聞こえてきそうですね。
実は手荒れがなかなか治らない最大の原因は・・・
手の安静が保てない
ことにあります。
あらゆる治療行為において最も大切なのは患部を安静に保つことなのは言うまでもありません。
しかし「手」という器官は日常生活で使用せずに生活できることはまず不可能です。
ご飯を食べたり、仕事をしたり、家事をしたり、育児をしたり、ゲームをしたり、スマホを操作したりなどなど
あらゆる生活の面において「手」は必要不可欠です。
過去当院でも、青果物を扱うお仕事で常に手を動かし、野菜の汁などが原因による難治性の手荒れで定期的に通院されている患者さんがいらっしゃいましたが、
ある日突然、完全に手荒れが治った状態で受診されました。
「キレイになりましたね!何かあったのですか?」と聞いてみたところ
「実は腕を骨折して2週間ほど入院していて、その間全く仕事をせず手を使わない状態でいたら手荒れがキレイに治ってしまいました」
との返事が返ってきました。
またこのお話には続きがあり、この患者さんはその後もお仕事に復帰されたのですが以前ほど重症且つ難治性の手荒れで悩まされることはなくなったのです。
しかし現代においてたとえ1週間でも家事、育児、仕事をせずに手を安静に保つということはなかなか難しいですよね。
なかにはお盆や年末年始などの長期休暇中は手荒れの調子はいいけど、また普段の生活に戻ったら手荒れが再発して…という方も珍しくありません。
具体的な治療法
そんななかでも少しでも手荒れを良い方向へコントロールするための対策として、
まずは洗剤を扱うときや、洗濯物を干すときは必ず手袋を着用するという方法を心がけてください。
洗い物だけでなく洗濯物を干すとき、特に冬場は洗濯物についたわずかな水分が手に触れると、その水分が蒸発するときに皮膚の水分も一緒に奪いさって乾燥した手の状態になってしまいます。
そしてお薬を塗った後に綿やビニール系の手袋をするという方法も有効です。
お薬を塗って絆創膏をする方法もアリなのですが、多くの方は逆に絆創膏でカブレを起こしてしまう事が多いので注意が必要です。
またお薬の中には塗るタイプのもの以外にも貼るタイプのお薬(エクラープラスター®)もあり、亀裂を伴った手荒れには有効なことがあります。
それでもアトピー性皮膚炎がベースにあって、なかなかコントロールが難しい…という方には紫外線療法(エキシマランプなど)という光線療法も有効なことがあります。1週間に1~2回、紫外線治療を行うことで少しでも手荒れ・手湿疹を良好な状態にコントロールしていくことが期待できます。
まとめ
手荒れは皮膚バリア機能の破壊から生じ、炎症が継続することによって生じる難治性の傷です。
可能な限り手の安静を保ちつつ、ステロイド外用剤や光線療法などで炎症をコントロールしていくことが治療のポイントとなります。
当院にも湿疹に対する治療機器としてエキシマランプ(エキシプレックス308®)やナローバンドUVB治療器(ダブリン®)を備えています。
もし塗り薬や貼り薬だけでの治療ではなかなか難しいという方はいつでもお気軽にご相談にいらしてください。
それでは今日も健やかな肌で素敵な1日を過ごしていきましょう!