寒いこの時期「乾燥肌で困っている」という訴えの患者さんが多く受診されます。
空気が乾燥すると皮膚の水分も奪われてしまうためすぐに「カサカサした皮膚」、いわゆる「乾皮症」の状態になってしまいます。
カサカサした皮膚というのは皮膚のバリアが破壊された状態であり、汗・汚れなどの様々な物質が皮膚から侵入してしまうのと
痒みを感じる神経が非常に敏感な状態になってしまうため、衣服などのちょっとした刺激で「痒み」を生じてしまうことが問題となります。
こういった場合我々皮膚科医は皮膚のバリア機能を改善させるべくまず「保湿剤」を処方します。
しかし「いくら保湿剤塗ってもすぐにカサカサしてしまうんです・・・」という訴えをしばしば耳にします。
この問題を解決するために保湿剤というお薬の役割を考えてみましょう。
保湿剤というお薬は「皮膚に膜を張る」ことにより・・・
①外部からの様々な物質(汗・汚れなど)の侵入を防ぐ
②皮膚の水分を閉じ込めて内部からの水分蒸発を予防する
という役目を持っています。
夏場など汗で痒くなるという時期は①の役目を利用して汗などによるかぶれを予防することができます。
逆に乾燥する時期は②の役目が非常に重要となります。
しかし保湿剤はカサカサした皮膚にいくら塗ってもほとんど効果がありません。
一時的にしっとりした感じがするのですが1時間もするとすぐにカサカサしてしまいます。
ではどうすればよいのでしょうか?
答えは「皮膚にたっぷりと水分が含まれた状態で保湿剤を外用する」ということです。
保湿剤自体には水分は全く含まれず、あくまで水分蒸発を防ぐ「ふた」の役割をしているだけなので
いくら保湿剤のみを塗ってもお肌がしっとりしない理由はここにあります。
「入浴後5分以内に保湿剤を外用しましょう」と薬局で指導を受けられると思いますが、入浴後は特に皮膚に水分が充填された状態です。
この状態で皮膚に膜を張ることで水分を閉じ込め(皮膚にふたをして)、潤いのあるお肌を維持できます。
また夜だけでなく、朝・日中なども霧吹きなどで一度ぬるま湯などを乾燥しやすい部位に吹きかけてからすぐに保湿剤を塗るようにすると潤いのあるお肌を長く維持することができます。
霧吹きなどを使用せずとも一度手をぬるま湯に浸し、塗れたその手で乾燥しやすい部位をなでることでも水分はしっかりといきわたります。
女性の患者さんには
「化粧水を塗ってから乳液を塗るのと一緒ですよ。いきなり乳液だけ塗ることはされないのではないのでしょうか?」
とご説明すると納得されやすいようです。
【ここで注意!】
化粧水と乳液のお話を出しましたが、あまりにもカサカサしている状態の皮膚や湿疹を生じている皮膚に「化粧水」を塗り付けることは
化粧水の中の様々な成分によりひどい「かぶれ」を生じるためかえって皮膚の状態を悪くしてしまいます。
この時期「首から上が痒い!」という訴えの女性患者さんが増えますがそのほとんどが「化粧水かぶれ」です。
普段使用している化粧水であっても皮膚のバリアが壊れている状態で「水以外の様々な化学物質が入った化粧水」をベタベタ塗るということは
「擦り傷に塩水を塗り込む操作である」と認識してください。
水分を与えるだけなら「水」で十分です。
また、保湿剤というのは正常なお肌の状態を維持するためのものです。
よく 「保湿剤はずっと塗っているのですが、湿疹が治りません。」 という訴えを耳にします。
保湿剤は乾燥したお肌に潤いを与える事はできますが
炎症を鎮静化させる効果は全く持たないため、いったん炎症を起こしたお肌にはいくら塗っても炎症を抑えることはできません。
炎症を起こしている状態でいくら保湿剤のみを外用してもどんどんと炎症は進行してしまい、ひどい湿疹病変となってしまいます。
炎症を起こしている状態ではいったんステロイド外用剤などを使用して炎症を鎮静化させてから(皮膚の状態を正常にリセットしてから)
保湿剤を継続外用することで「しょっちゅう湿疹を起こして困る」ということを予防することができます。
まずは正しい保湿剤の使用方法を実践してみましょう!