おはようございます!よしき皮膚科・形成外科、院長の吉木です。
それでは本日の診療所日記をお届けいたします。
お子さんの虫刺されが強く腫れるワケ
今年は暖冬の影響もあってか、虫刺されが冬の終わりから増えてきています。
虫刺されはなぜ腫れて痒くなるのかというと、吸血する昆虫の中には血を吸いやすくするために血液を固まりにくくする成分を注入してから吸血する虫がいます。その代表格が「蚊」です。蚊の唾液には血液を固まりにくくする凝固成分が含まれています。
異物を注入された皮膚は当然免疫反応を起こし、異物の排除に取り掛かります。
まずは異物を洗い流すためにヒスタミンという物質が放出されます。この物質は血管を広げ、血管から水を出して異物を薄め洗い流していきます。
このヒスタミンという物質が痒みを生じさせる物質の代表格です。蕁麻疹なんかでもこのヒスタミンが皮膚において多量に放出されるため皮膚がミミズばれみたいに腫れ、強い痒みを伴います。
そして遅れて異物を食べて除去する細胞や、異物に汚染された自分の皮膚を破壊して排除するためのリンパ球と呼ばれる細胞が集まり、ここで免疫反応はマックスを迎えます。
この時がもっとも強く炎症を起こして腫れる時期になり、異物を注入されてから約1~2日目となります。
こうして異物の排除が終了すると免疫反応終了の指令を出す細胞が集まってきて、炎症反応の終了を迎えます。
そして繰り返し蚊に刺されているとどうなるか?というと、2回目以降の蚊の唾液に対して効率よく強力に免疫反応を起こすための訓練された精鋭集団がどんどんと形成されます。
なので年齢が上がるにつれて、蚊に刺された部位は毎年徐々に炎症反応を強く生じていくようになっていきます。
個人差はありますが、コレがお子さんの虫刺されが強く腫れる理由です。
じゃぁ、大人はどうしてあまり強く腫れずにちょっと痒くなるだけで済む人が多いの?という疑問ですが
毎回毎回強力に炎症反応を生じるということはそれだけ皮膚を破壊するだけの反応が強く生じてしまうということです。
そこで免疫システムはよくできたものでして、蚊に刺され続け大人になるころには強力に免疫反応を起こし異物の侵入した自らの皮膚まで破壊するリンパ球の反応が徐々に抑制されるようになっていきます。
なので大人の場合は蚊に刺されてもミミズばれになる程度で速やかに症状は改善します。
このようにある特定の異物に対して免疫反応が生じなくなる現象を「免疫寛容」と言い、むやみやたらに免疫反応を起こして人体を破壊しないようにするための機能が免疫システムにに精密に組み込まれているんです。
よく「免疫力を上げる!」というキャッチコピーを謳った商品や言葉を見かけますが、免疫学を学んできた側からしたら
「要らんところまで免疫反応起こして自己免疫疾患になるだけダロ!」
という印象しか抱きません(笑)
また話は変わりますが、この免疫寛容を用いた治療法で有名なのが耳鼻科でおなじみの「舌下免疫療法」です。
特に口腔内や腸管から吸収されるアレルゲンとなりうる物質に対して、免疫システムは免疫寛容を誘導しやすいということが医学的に解明されており、このシステムを使用して様々なアレルゲンに対して免疫反応を起こさせないようにしようとする治療法となっています。
このように虫刺されひとつ通してみても皮膚免疫学はメチャクチャ興味深いと感じませんか?
それでは今日も健やかな肌で素敵な1日を過ごしていきましょう!