食物アレルギー、アトピー性皮膚炎に関する最新の知見 | 福岡県福津市の『よしき皮膚科・形成外科』(アトピー性皮膚炎・巻き爪の治療、美容脱毛など)

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食物アレルギー、アトピー性皮膚炎に関する最新の知見

先日このような本が出版されました。

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まさにこの数年間の皮膚科領域における疾患に関する考えかた、ひいてはアレルギー性疾患に関する知見の集大成という内容の本です。

 

私は大学病院在籍時代、皮膚免疫に関する研究を行ってきたことと

私の指導医・ボスがまさに最先端・最前線で活躍してきた免疫学者であるおかげで最新の知見を常に得る事ができましたので

「アレルギー性疾患の原因は皮膚である」

という研究皮膚科学会、免疫学会全体における当時の考えが体に染み付いておりました。

ですので大学を離れ、3年前開院した当初からアトピー性皮膚炎と食物アレルギーに関するご相談を多く受けてまいりましたが

その都度

「アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下している状態なので、まずはしっかりと保湿剤を使用した皮膚バリア機能の改善を行いましょう。」

「皮膚から様々な物質が侵入し、皮膚で炎症を起こす事でそれに続いて様々なアレルギー性疾患を引き起こす事になるので

 皮膚に湿疹病変が出てきたら速やかにステロイド外用剤や免疫抑制剤含有軟膏を使用して炎症を抑えましょう。」

という事を患者さん、患者さんのご両親にお話してきました。

また生後数ヶ月の赤ちゃんをお連れになった親御さんから「食物アレルギー検査をして欲しい」というご相談も受けましたが

「むやみにアレルギー検査をして反応のあった食物を除去する事はかえって食物アレルギーを誘発したり悪くする事になるので安易にアレルギー検査を行う事はやめましょう。」

「むしろしっかりと食べ物を食べる事で食べ物アレルギーの発症を抑える事ができますし、成長に必要な栄養が取れなくなることのほうが赤ちゃんにとっては有害な事になります。」

とお話してきました。

この最新の研究結果に基づいてアレルギー性疾患発症のメカニズムをお話させていただいたつもりなのですが

どうしてもこの内容に関しては非常に懐疑的になられた患者さん・親御さんがしばしばいらっしゃったのと

なかには「どうして検査をしないんだ!」とご立腹された親御さんもいらっしゃいました。

というのも15年ほど前までは

「アトピー性皮膚炎は特定の食べ物を摂取する事で皮膚に炎症が起きる病気である」という説があり

出生直後から食物アレルギー検査をしてアレルギー除去食をする事がアトピー性皮膚炎発症を抑える事ができると信じられていたからです。

 

ですが今から8年ほど前、「皮膚から吸収される物質に関してアレルギー反応を強く起こし逆に口から摂取する食べ物についてはアレルギー反応を抑える機序がある」

という報告がなされました。

そこから皮膚のバリア機能とアレルギー性疾患との関係に関する研究・調査が多くなされ

ついに昨年「特定の食物を摂取し続けた方がその特定の食物に対するアレルギー反応が抑えられる」という研究報告が出ました。

リンク先1【アレルギーに関する最新情報】食べる、触れる事はアレルギー性疾患の発症を劇的に予防できる!

リンク先2スキンケアでアレルギー性疾患を防ぐ!~免疫研究の最新情報~

つまり「アレルギー除去食をする事がかえって食物アレルギーを誘発したり悪くさせる」ことが証明されました。

この研究内容を受けて世界的にアレルギー除去食の推奨はなされなくなる事は間違いありません。

【注意!】

もちろんある特定の食べ物に対してすでにアナフィラキシーショックを起こすほど重篤な食物アレルギーを持っているならば

決ししてその食べ物を無理やり食べさせる事は絶対に行ってはいけません!

ショックを起こすほどの食物アレルギーがある場合はなにをおいてもその原因となる食物を調べて徹底的に除去される必要があります。

 

食物アレルギーのリスクを減らすにはまずは小さいうちから何でも食べさせる事。

特に安易に食べ物アレルギー検査を行ったり、親の判断のみで特定の食べ物を食べさせない事は行わないようにしましょう。

またアトピー性皮膚炎の原因は「もともと弱い皮膚のバリア機能」です。いわゆる「体質」です。

「体質」を決定するのはその人の体の設計図、「遺伝情報」です。

よく「体質改善」を謳った治療が横行していますが、体質を変えるということは遺伝情報を書き換えるという事です。

残念ながらそのような治療法はまだ確立しておりません。

体質を変えるのではなく、うまくその体質と付き合っていくことをまずは実戦していきましょう。

そのためのお手伝いとして我々皮膚科医がいます。

どのようなケアをしていけば良いのか?

わからない時、困ったときは皮膚科専門医にまずは相談してください。

 

最後に

この本の1章から4章までの内容は皮膚科医のみならず多くの臨床医に役立つ内容でありぜひ様々な科の先生方にも読んでいただきたいと思います。

(ちなみに私はこの本の出版社・著者から利益を得てこのような内容の文章を書いているものではない事をお断りしておきます)