過去これまでも食べ物アレルギーと皮膚の湿疹の関係について書かせていただきました。

「食べる」ことが食物アレルギーの予防

今回も「皮膚バリア機能の低下が様々なアレルギー性疾患を誘発する」ことを皆さんに知っていただきたいと思います。

いまだに「アトピー性皮膚炎、湿疹病変の原因は食物アレルギーの結果である」という誤った認識のもと

採血してアレルギーの数値を調べて、数値が上昇している食物を除去するという診療が根強く残っていますが

これは全く間違ったやり方であり生後数か月の赤ちゃんに対して血液検査をして対象となる食物を除去することは

かえって食物アレルギーを進行させてしまう、ということがはっきり分かっています。

採血によるアレルギー検査は皮膚バリア機能が低下していることでハウスダストなどに含まれる食物アレルゲンが皮膚から侵入することにより上昇する数値、つまりはアレルゲンが侵入して湿疹を起こしたことによる「結果」を見ているだけであり

湿疹の「原因」を調べている検査ではないということを知ってください。

 

全くアレルギー症状のないお子さんに対して、採血してアレルギー除去食を強いるという診療の背景には

西暦2000年に発表された米国小児科学会の声明の中にあった

「長期間の母乳栄養とその間の低アレルギー離乳食の推奨」と

「母親はアレルギー除去食を行う事の推奨」

があると考えられます。

そのため臨床の現場において採血して数値の上昇している食物アレルゲンを除去するということが行われていたのでしょう。

しかし米国小児科学会は8年後の2008年には

「アレルギー性食品の摂取開始を遅らせることにはアレルギー性疾患発症の予防に科学的根拠はない」

と改めた声明を出していますが、なぜこの内容だけが広く知れ渡っていないのか、知れ渡っていたとしてもなぜいまだに多くの医療機関で採血とアレルギー除去食がなされているのかということは不思議なことです・・・。

 

蕁麻疹、喘息を含めた様々なアレルギー性疾患の原因は皮膚からアレルゲンが侵入するのが原因であること

さらには食物アレルギーについては「食べる」事が何よりの予防であり、重篤なアレルギー症状も予防できることは明確にわかっています。

(もちろん重篤なショック症状を生じるような食物アレルゲンが分かっていれば、それを無理に食べることは厳に控えるということは絶対に必要です)

 

我々人間を含めた生物にとって「食べる」という行為は生命を維持するうえで最も重要な日常行為です。

そのため生物は口から摂取するものはなるべくどんなものでも拒絶せず消化吸収するための機能を備えてきました。

その進化の結果として「経口免疫寛容」という「口から入ってくるものは体内に受け入れてやって排除しないようにする」

という生命維持において素晴らしいシステムが形成されました。

重篤なアレルギー症状を起こさない人に対して「アレルギー除去食」をするという行為は

こういった自然の摂理にも逆らう非常に不自然な行為であり

成長・発育段階にあり、多くの栄養素を必要とするお子さんに対してどれだけ不利益が生じることでしょうか。

 

我々皮膚科医は「皮膚」を診察・治療します。

しかし肌質は個人差が非常に大きいです。

乾燥肌・湿疹を生じやすい肌質を持った方は「皮膚のバリア機能が弱い」ということです。

残念ながらまだ皮膚バリア機能をもとから改善させるお薬は開発段階にあります。

それまでは毎日の保湿剤外用による皮膚バリアの強化と

異物が侵入して炎症を起こした湿疹病変を生じた皮膚には

ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤を使用することで炎症を鎮静化させるという治療を継続してください。

世に流布しているアレルギー性疾患やアトピー性皮膚炎に対する誤った考え・治療法などに惑わされないようにしてください。

疑問・悩み・治療法などに付いては我々皮膚科医がお力になれると思います。

お困りの際はどうぞお近くの皮膚科専門医のいる医療機関でご相談ください。